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日米の技術革新

  アメリカの技術革新は、何とも大胆で革命的な様相を示すことがあります。背景にはアメリカ国民の考え方や風土があるでしょう。政府の施策がより大胆な革新を助長する面もあります。
  金融革新のケースでは1999年の「グラス=スティーガル法」の改正によって銀行と投資会社(証券会社)の垣根が取り払われました。このことが双方間の競争を生み、レバレッジ(てこ)の原理を生かすべく巨額の借り入れと大胆な投資活動を誘発しました。
  また2000年末の「商品先物取引現代化法」は、CDS(Credit Default Swap)に関する規制緩和です。本来、社債などの金融資産を抱え込んでいることによって甘受するかもしれない保育リスク(たとえば社債の発行者が倒産するかもしれない)に応えられるよう保険機能をもつ証券ですが、その購入を債券の所有者以外にも開放しました。つまりある会社が業績不安に陥ることに対する“賭け”に誰でもが参画できるようにした金融商品です。
  これらの政策変更が金融界(ウォール街)の革命(暴走?)を助長しまして、革新の熱狂下において巨額の報酬を得た人びとを生みました。巨額の報酬こそが彼らの主たる目的だったでしょう。しかしバブルが崩壊したときのツケは、結局、アメリカの政府資金(つまりアメリカ国民の税金)およびヨーロッパ諸国の銀行を救済するヨーロッパ諸国民の税金によって手当てされることになります。
  日本や中国などアメリカへの好調な輸出で潤っていた地域や産業は、それまでの活況の反動として大きな落ち込みを経験しました。経済がグローバル化してお互いに深く複雑に絡み合っている以上、避け得ない事態です。
  金融革新のように、一時的熱狂を支えたに過ぎないともいえるような革新があるいっぽうで、IT革命の場合のように、人類が未来に対して大きな一歩を踏み出す契機となりうる革新もあります。
  ITの場合には、アメリカの軍事予算が大きな働きをしました。インターネットによって誰とでも容易に情報交換ができるようになりましたが、この基本原理はアメリカ国防省のARPANETから生まれました。万一ミサイル攻撃を受けて2地点間の通信線が破壊されたとしても、幾とおりもの迂回路を辿ることを可能にし、通信が阻害されないようにと考案された技術です。
  アメリカの研究開発には、しばしば政府の軍事的要請や軍事予算が大きな助けになることがたくさんあります。“軍事”となると採算を度外視して資金を投入することが可能になるからです。SBIR(Small Business Innovation Research)という制度があります。直訳すれば「小企業革新技術」です。アメリカ政府を構成する10省庁がそれぞれ必要とする研究テーマを提示し、中小企業者に応募してもらって採択されれば一定の資金を提供するという仕組みです。
  アメリカでは1982年に始まり、日本でも20年ほど遅れて導入されました。しかし日本の場合にはアメリカほど成果が上がりません。それは日本には防衛省の研究調達という枠組みがないからです。
  日本における研究開発は、その研究が成就したときに実用化され、そのときにいくら投下資金が回収できるかがおおむね問題になります。つまりはコストに対して便益がいくらあるかが意識されます。民間企業の研究開発は、当然ながら採算が問題になりますが、政府などの公的機関が行う研究開発についても、しばしば現実性と採算性が問われます。
  日米の間には、資金を投入する心意気においてかなりの違いがありますから、生まれる技術的成果や影響度についても、差が生ずることは否めないでしょう。
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