カジノ(マカオ)
現在のマカオでもっとも知られているのは、カジノのメッカということでしょう。
カジノはポルトガルの植民地になって以降、ずいぶん古くから行われていたようです。最近は経営権の国際入札が行われるようになり、アメリカ資本の参入などもあって大いに拡張されました。近年には、売上高規模がアメリカのラスベガスを凌駕して世界一になったとされます。
有名ホテルにはだいたいカジノ施設が整備され夜を徹して営業しています。ホテル内のその区域に入るところには守衛がいて24時間警戒しています。子どもの入場を制限するのが主目的のようで、大人であれば誰でも自由に出入りができます。最近は中国本土からの旅行が緩和されたこともあってか富裕層が大挙して参入しているようです。彼らは巨額の資金を賭けているといいますから、素人が少額のチップを賭けて気楽に遊ぶという雰囲気ではありません。ルーレットにしてもむかしのように球(ボール)が手で放たれるのではなく機械式にはじかれて廻り始める方式です。
かくしてマカオの経済はカジノからの収入に大きく依存することになりました。経済成長が続いているようで、税収の7割がカジノからという話もあります。その結果、消費税がなく、一般市民への税率が低いにもかかわらず、各種の社会保障は充実し、教育や医療も負担が少なくてすむそうです。たとえば18歳未満と65歳以上の医療費は無料であり、幼稚園から中学校のほとんどで学費が免除されるといいます。日本で話題となっている給付金の類いもふんだんに支給されるようです。
しかしながら、新卒学生の就職先としてもっとも人気が高いのは、カジノのディーラーであるという話を聞くとなんとも暗鬱になります。もっとも高い収入を得られるからだそうです。人間の業(ごう)とは「カネとイロ」と言いますから、ギャンブル活動にはある程度の普遍性と永続性があるのでしょうが、これでいいのかこれから先どうなるのか、と考え込まざるを得ません。
当局もカジノ経済からの脱却を目指しているようです。なるほど文化遺産については隣の香港にまさるものがあります。この地域に進出してきたポルトガル人がイギリス人より早かったこととと、当局が文化財保護に留意してきたことなどによるものでしょう。しかしいかにも土地の面積が限られていますから、今後にどういう方向で発展をめざしていくのか頭の痛いことでしょう。
我が国でも地域振興のためと称して、折々に「カジノ解禁論」が主張されます。税収などの経済効果は見込めるでしょうが、生活破壊が現出するのは必定でしょう。闇社会の参入などもありえます。インチキはどうなのでしょう。マカオではそれぞれのカジノで、賭けるときに用いるチップの偽造があったことなどが報じられます。ルーレットにしても、球を手で放つむかしの方式では、訓練によって落とす場所を操作できるという話を聞いたことがあります。資金洗浄(マネーロンダリング)という問題も浮上するでしょう。
マカオが1999年に中国へ返還された後、50年の猶予期間を経たときに中国がどういう扱いをするのかが鍵を握ります。現実主義的な中国のことですから一挙になくすことはないでしょう、カジノ特区とでもするのでしょうか。
>経済効果は見込めるでしょうが、生活破壊が現出するのは必定でしょう。
先生の仰る通りだと思います。
物を生み出すものが職業であるべきです。カジノの振興など馬鹿げています。虚業栄えて国力衰える。
by アヨアン・イゴカー (2010-11-07 20:57)