深圳
深圳は香港島の対岸にある中国本土の都市です。常住人口が800万人ほどで一人当たりGDPが1万ドルを超えるというから大都市です。遠望すると高層ビルが林立しています。深圳の「圳」とはもともと小さな川を意味する漢字だそうで、むかしは小さくて深い水たまりが多い不毛の沼沢の地であったために、そういう名前が付けられたそうですが、いまや見違えるほどの大都市です。
深圳訪問で興味深いのは、香港から深圳に向けての境界を列車で越えるときの出入国管理ならぬ「出入界管理」です。東京の私鉄のような立派に整えられた高速電車で川を渡り香港側の終点の駅で降ります。そこからは歩いて太い線で画された国境ならぬ分界境を越えて、パスポート・コントロールや荷物検査などの手続きを経ます。
「羅湖」という地点が植民地時代からの香港との分界点でしたが、往来する人びとが増加したので、最近「落馬州」という地点が新たに開かれ、いまは2ヵ所になっています。分界を越える電車もそれぞれの駅へ行く便が異なりますから、待ち合わせをする場合には注意が必要です。
深圳と香港とではガソリンをはじめとして物価の差がありますから、買い物のため行き来をする現地人は多いようです。最近は中国のインフレが進んで深圳の方が物価高の物があるなど、双方の消費統計をどう解釈するかについてはむつかしい面があるようです。両方のパスポート(身分)を所有している人もいて、出入界管理についてどこまで実効的に制限をしようとしているのかよくはわかりません。ただし香港でも中国でもない第3国のパスポートを持っているものは、出入界管理に長い列をつくらされます。
深圳の都心部に入ると、幅広い道路が整備されており、近代的な官公署、事務所ビル、マンション、ショッピングモールなどがそびえています。ずいぶん街がきれ いで、香港のような賑わいがないのでアメリカでよく見かける人工的に作られた都市のようです。往来する人影をあまり見かけないので〈中国らしくないナア〉と思っていたら、都心部ではオートバイの使用は禁止なのだそうです。自転車は禁止ではないそうですが、その姿も見かけません。
もっとも人がいないわけではありません。ウオルマートなどのショッピングセンターには人が溢れています。とくにこうした大型店では販売員の数が多いのが目立ちます。さすがに人件費がいまだ安価なお国柄です。
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