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経済成長率 名目値と実質値

 経済成長とは、1年間のGDP(国内総生産)が前年に対していくら増減したかを年率で示すものです。国内総生産とは、国内においてそれぞれの主体が経済活動に取り組んで実現した売上高からその主体が原材料や設備の取得などのために外部へ支払った金額を差し引いて残った部分です。すなわち付加価値額といわれるもので、各経済主体が、生み出した経済的価値を合計したものです。
 経済主体には、個人もあれば法人もありますから、個人事業主の所得のほか法人(企業など)所得もあります。法人によって獲得された所得は、従業員への給与のほか、株主への配当、減価償却、企業の内部留保などに回されます。したがって経済成長率の高低がただちに各個人の所得の増減に反映されるものではありません。ただし当然ながら、大きな関係を持っています。
 ところで前回に示したグラフは経済成長率の実質値です。実際の付加価値額の増減から、この間における物価変動による影響を除去したものです。前年と同じ経済活動をして同じ金額の売り上げを実現したとしても、その間にインフレがあって経済全体の物価が上昇していたとすれば、その影響を除去する必要があります。いっぽうデフレ下にあって経済全体で物価が下落している状況では、実質的にはもっと多額の経済価値が生み出されたはずであると考え、物価の下落率で割り戻します。このように物価変動による影響を除去して、前年に比べた経済価値の増減を計算したものが実質値です。
 ところが我々が日常的に手にする給与額は、前年との物価変動などが除去されていませんから名目値といいます。こちらの方が我々の生活実感に近いわけですから、日々の感覚としては名目値による経済成長率を考えることになります。
 経済成長率の名目値によるものと実質値によるものとを対比してグラフ化したのが下図のようになります。最近はデフレ傾向が続いていますから名目値の伸びが低くても実質値による伸びが高くなります。政府の発表などには、ふつう実質経済成長率を言うことが多いので、成長率の数字ほどには給与が増えていないと実感する人が多いでしょう。
 また経済成長率には、先に述べたように被雇用者の給与だけでなく企業の内部留保や配当などに回される部分を含み、個人事業主の所得も含みます。そこでサラリーマンなど何らかの組織に雇用されたうえで報酬を得ている人びとの給与の伸びを把握するには別途の集計が必要となります。
 「労働力調査」から得られる雇用者数のデータを用いて、雇用者一人あたりの報酬額(名目値)の前年に対する伸びを同じグラフのなかに記しました。最近、我が国ではこの伸び率のマイナスが続いていますから、雇用者の平均では前年より報酬額が減り続けていることになります。名目経済成長率がプラスの年であってもマイナスを示していますから、雇用されて働いている人びとの給与がきびしい環境のなかにあることが示されます。
名目・実質成長率など.JPG
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