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律令制下の国々

 5世紀の雄略大王は「吉備の乱」を鎮圧するなどして有力豪族を抑圧し、6世紀の継体大王は九州の「筑紫の叛乱」を鎮圧した。これらを契機として、畿内王権は急速に列島の支配体制を固めた。このことは『日本書紀』の記述や当時の古墳の築造状況からも窺える。
 王権は氏姓制・部民制で人びとを人的に把握するいっぽう、政権運営を組織的に進めるため法令による制度整備を進める。折しも中国大陸において、隋(581-618)・唐(618-907)が統一を果したのを見て「律令制」に範を採った制度を整えた。
 聖徳太子の17条憲法(604年)、「乙巳(いっし)の変」後の「改新の詔」(646年)、近江令(668年? 存在を否定する説もある)、庚午年籍(670年)、飛鳥浄御原(あすかきよみはら)令(689年)、班田收授制(692年)などによって、制度の骨格を固めつつ、大宝律令(701年)と養老律令(718年)の2つの「律令」で結実する。そのもとで飛鳥・奈良・平安時代と続く古代が花開いた。

 「律」は刑罰の規定で、「令」は現在の行政法である。「律令」は2度定められたが、律令を変改・増補する単行法の「格」および律令の施行細則である「式」は、弘仁格式(820年)、貞観格式(869・871年)、延喜格式(907・927年)と、3度編纂された。このうち「延喜式」のみが、現在もほぼ完全な形で残る。
 延喜式は905年(延喜5)に醍醐天皇の命により藤原時平らが編纂を始め、時平の死後は藤原忠平らが任に当たり、927年(延長5)に一応の完成を見た。その後も改定を重ね、967年(康保4)から施行された。
 作成が始まってから多年を経ての施行であるから、どの程度、実行に移せたかは疑問とされるが、「式」は官人向けの業務マニュアルとして、諸制度の細かな事項が列島規模で網羅する。そのため10世紀前半における列島全域の実情を知ることができる。
 以下では「延喜式」に記された情報をベースに、時代前後の状況を加えながら、律令制下における四国のようすを探っていく。

 「延喜式」の「巻22 民部上」には、地方行政区画が記され、全国が「5畿7道」に分けられる。
「5畿」は、大和・河内・和泉・摂津・山城の畿内5カ国であり、「7道」とは東山道・東海道・北陸道・南海道・山陽道・山陰道・西海道 の7つであり、これらが67の令制国で構成される。四国が属する南海道は、紀伊・淡路に始まり阿波・讃岐・伊予・土佐へと続く6カ国で成る。
 四国4ヵ国が全国67カ国において、国数でしめるウエイトは5.97%(=4/67)である。現在は47都道府県にしめる四国4県のウエイトが8.5%(=4/47)であるから、律令制下では四国以外の国が細分化されていた。

 「延喜式」では、国の大小と畿内からの遠近により、各国の性格づけをした。
67カ国は、大・上・中・小の4等級に区分された。基準に関する明確な規定はないが、租税負担人口、水田面積などを勘案して、貢納物を賦課したり、兵員を調達したりにおける目安とした。
 「大国」 14カ国
 「上国」 34カ国(阿波、讃岐、伊予を含む)
 「中国」 11カ国(土佐を含む)
 「下国」  8カ国

 また67カ国が、近・中・遠に3区分された。畿内からの遠近によって仕分けされ、貢納物などを都に運ばせる際の目安などとした。
 「近国」は、畿内5カ国のほか、西は因幡、美作、備前、淡路までで、東は若狭、美濃、三河までの17カ国である。
 「中国」は、近国以遠で、西は出雲、備後、讃岐、阿波までの6カ国、東は越中、信濃、甲斐、駿河、伊豆までの10カ国で、合計16カ国。讃岐と阿波はここに含まれる。
 「遠国(おんごく)」は、中国以遠で、西は石見、安芸、伊予、土佐からより遠い西南にある18カ国。東は越後、上野、武蔵、相模からより遠い北東にある11カ国。合わせて29カ国で、四国の伊予、土佐はここに含まれる。(伊予は初め「中国」であったが、「遠国」に改められた。貢納物を期限内に京進するのに苦労したからであろう)

 令制国を最初に設定した法令は何かは、はっきりしない。7世紀の後半ごろには国ごとに国府(国衙)が設けられ、国司制度が整った。中央から派遣された官人の任期は4~6年で、その都度交代した。
 よく知られた国司として、讃岐には菅原道真(讃岐の在任期間 886-890)がいる。地域の実情を詠んだ「寒早十首」などを含む『菅家文草』の著作があり、のちに天神様になった人物とされる。
 土佐には、歌人として知られた紀貫之(土佐の在任期間 930-935)がいる。京に向けた帰路の紀行文である『土佐日記』を、女性の振りをしてひらがなで書いた。
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